2006年 11月 16日
孤独に黙々と熊野古道を歩く ☆関西ひとり旅2☆
5時半起床。ホテルを7時過ぎには出て、ちょっと遠出。
本日の目的地は「熊野古道」。
大阪駅から環状線(東京の山手線のような感じ?)に乗って、天王寺で乗り換え、
そこから特急スーパーくろしお1号で、紀伊田辺へ向かいます。
そう、和歌山県です。
日本全国あれこれ旅をしてきていますし、
アナウンサー試験で全国の放送局を回りましたが、和歌山県は初めて訪れます。
昨夜の大阪の寒さにビビッて、熊野を歩くのに軽装すぎるのではないかと
内心ヒヤヒヤしていましたが(実際、朝の大阪は今シーズン一番の冷え込みだった)
日中は気温も上がりましたし、
やはり和歌山のほうが暖かいのでしょうかねぇ。
雲ひとつない青空の下、すばらしいハイキング日和となりました。
そもそも、熊野古道に行こうと思い立ってから大阪を拠点にしようと決めたので、
ある意味、メインイベントです。
熊野古道をちゃんと歩こうと思うと、日帰りでは到底無理ですが、
なんといっても世界遺産ですからね!
日本では12件目に登録された世界遺産です。
今回はその雰囲気を味わうだけでも価値があるだろうということで、
かなり短めの初心者ルートを調べていきました。
紀伊田辺駅到着。
ちなみに大阪からここまで爆睡。
バスに乗って、今度は熊野の入り口、滝尻王子に向かいます。
え?王子?ハンカチ王子みたい!と思った方にご説明すると、
王子というのは熊野参詣道に祀られた熊野の神の分社だそうです。
数多くあります。
紀伊田辺の駅から滝尻のバス停まではおよそ40分。
ここでも爆睡。まあ、我ながらよく寝ます。
滝尻に到着。気づけば、山の中でした(苦笑)。
さて、滝尻のバス停で結構降りるのかな?と思いきや、
私以外誰も降りません。
もともとあまり乗っていませんでしたが、
ハイキングの格好をした老夫婦が2組は確実に乗っていて、
「あっ、私と同じルートかな。案外親しくなっちゃったりして」なんて思っていたのです。
予想ははずれ。もう少し先から歩くのかもしれませんね。
というわけで、バスを降りて、私はまったくのひとりとなりました。
まあ、もともと、ひとり旅ですから、これも醍醐味なんですけど、
いきなり寝起きで周りは山ですからね(苦笑)。
これは夢か、現実か!?
滝尻で下車後、歩き出す前に、熊野古道館というところに立ち寄ります。
ちょうど三角屋根の建物です。
ここに入って情報を収集できるということでしたが、誰もいません。
歩く客はもちろん、係りの人もいませんでした。
とりあえず、ひととおり展示物を見て、あとにしました。
改めて熊野古道とは・・・
熊野三山への信仰の道として上皇や貴族が往来するなど栄えたところです。
滝尻王子で大きく深呼吸。ここは熊野の霊域の入り口とされているそうです。
さあ、いざ出発!!
・・・っていきなり看板が私をビビらせます(苦笑)。
でも、道が最初から急坂だというのは調べてあったので、気合を入れて登りはじめました。
するとどうでしょう・・・
気合を入れすぎたせいか、写真を撮りながらゆっくり進んだせいか、
実は最初のポイントである「胎内くぐり」まではまったく疲れを感じませんでした。
実際、運動不足の体にはこたえているはずなのですが、
きっと一人で山道を歩いて、興奮していたのかもしれません(笑)。
そして、いくら平日だからって世界遺産の熊野古道に、私以外誰もいない!!!
その静けさにも心臓がいつもより早く古道・・・もとい鼓動を打っていたように思います。
って、シャレを言っている場合じゃなくなってくることをこのときの私はまだ知りません。
急な坂道を歩きはじめて10分ほどでしょうか。
胎内くぐりに到着!
岩と岩の隙間をくぐり抜けられると、安産祈願になるらしい。
どれどれ、まだ私はその予定はないけど、今からくぐっておきますか・・・
え?これ?
すごい狭いんですけど・・・(汗)。
これは無理。
ちなみに、くぐりぬけられた場合、上から見るとこんな感じ。
狭すぎます・・・。
というわけで、土まみれになればできたかもしれませんが、やめておきました。
胎内くぐりからちょっと上に行くと、すぐ「乳岩」に到着。
奥州平泉の豪族である藤原氏夫妻が、熊野詣の途中、夫人が産気づいて出産したため、
この岩穴に子供を残して参詣を済ませて戻ってくると、
岩からしたたり落ちる乳で生まれたばかりの子供が守られていたとのこと。
そんな伝説の岩だそうです。
(出産後にそんな動けないはず!とか、放置された乳児が生きてるはずがない!とか、
そういう突っ込みはこの際ナシで・・・苦笑)
ここまでですっかり自然と一体化した気分になり、
達成感すら味わってしまった私。(まだ歩いて10分ちょっとなんですけど・・・)
乳岩からの登りで、いよいよキツく感じはじめました。
そこから5分ほどで、到着したのが不寝王子。「ねずおうじ」と読みます。
社があったのかは定かではありません。
ひとついえることは、ここで寝ているわけにはいかないということ。(当たり前だ)
この不寝王子からの登り坂が、今回一番きつかったです。
とにかく、木の根っこの出っ張りなどで足元はガタガタ、ゼーゼー息が切れてきます。
一人で歩いていると、誰とも話しませんし、自分の息だけが聞こえてくるという、
ちょっとした異空間。
さらに、このあたりから木が生い茂りすぎて暗くなっているところも出てきて、
そんなときに限って茂みがゴソゴソと音を立てたりするのです。
もしや、クマ?ま、まさかね。だ、だ、だれか、そこにいたりしますぅぅ?
って、文章で書くと緊迫感ないかもしれませんが、
山の中にまったくのひとりでいるわけで、やはり、ふとした瞬間に相当の恐怖が襲います。
それでも、かなり高いところまで登ってきているので、時折、下を見てみては、
自分を励ましてみたりもしました。
あと、途中途中の緑のきれいさに目を奪われたりもしました。
(ちなみに、道に迷うということはあまりありませんでした。
なぜなら、このような看板が出ているところも何箇所かあったのと、
目印となるカラフルな紐?が木に巻いてあったりもしたので・・・。)
そうして、まだかまだかとがんばって、汗かきながら歩いていくと、
つきました!やっと「剣ノ山経塚跡」です。
この付近でお弁当を食べたという人の熊野古道体験記を事前にネットで読んでいたので、
私もそれにあやかろうと、ここをお昼ごはんポイントとしていたのです。
しかし・・・何もありませんし、相変わらず誰もいません。
追ってくる人もすれ違う人も、本当に誰もいないのです。
ちなみに、私の前後左右の風景は次の4枚です。
前
後
左
右
というわけで、本当に木々だけ。そして、鳥もさえずっていなくて、無音。
こんな空間、久しく来たことありません。
冗談抜きに、世界が止まっている気がしました。
お弁当といってもコンビニで調達したおにぎりのみ。
転がってるこの丸太に座って食べました。
そして、ゆっくりしているのもなんだか寂しいので、15分くらいで再び歩き出しました。
ちなみに、熊野古道は携帯の電波が3本ちゃーんと立っていまして、
お仕事関連の電話を、歩いているうちに2つ着信したのですが、
それも不思議な気がしました。
こんな山の木々の中で、スケジュール確認とかしてる自分に(笑)。
さて、ここからは下り坂が続き、非常にラクになります。
気持ちよく、どんどん下ります。ルンルン♪♪
しかし、私は調子に乗りすぎて、ある場所を逃してどんどん下ってしまったのです。
それはしばらく下ってから気づきました。
左側からの道との合流する場所があったのです。
え?左にも道があったの?
よく見てみると、相当の階段。でも、そっちのほうが整備されているともいえる・・・
立て看板を見てみると・・・誰かの字で書き加えられている文字・・・
展望台!?
確かに手元のMAPには展望台があるって書いてあったけど、
私、通過してきちゃったのか・・・。
どうしよう。この階段をまた戻るのは相当の心臓破り。
でも、見ておきたかった。
うーん・・・。時計を見ると、まだ余裕はありそうでした。
引き返すことを決意できるのも一人で歩いている醍醐味かも!
私は、がんばって戻っていきました。
数分歩くと、展望台(といっても特に何もないですが)に到着。
やはり、戻ってきてよかった。
ここからの眺めを独り占め。
そうして、さらに戻って、見逃したであろう分岐点をこの目で確かめようと逆走すると、
看板がありました!
これ、さっき確かに確認している。おかしいな、どうして展望台の位置を見逃したのだろう。
近づいてよく見ると・・・
なるほど、熊野古道って書いてあるからそっちだと信じて疑わなかったのだ。
まあ、これなら仕方ないな。
納得の上、再度先ほど下った本来の熊野古道をもう一度歩くことに。
同じ道・・・なんだかつまらないなぁと思っていたら、
なんと、1回目に気づかないで通り過ぎていたもうひとつの素敵なポイント発見!
(我ながら下り坂で調子に乗りすぎたらしい・・・)
それは、ヤッホーポイント。
へえ。
いつもなら絶対恥ずかしくてやらないのですが、
右見て左見てもう一度右見て・・・やはり人は誰もいない。来る気配もない。
「ヤーーーーーッホーーーーーーーーーー」
すると、返ってきたのです。ちゃんと。こだまが。
感動しました。本当のやまびこだ!!!
ちなみに、先ほどの立て札の写真の下。
・・・早く言うとこだまが2回返ってくるって書いてある!
よーし、もうこわいものはない(笑)。
「ヤッホ」(早口)
すると、返ってきたのです。ちゃんと。こだまが。2回!!
またまた感動しました。これは面白すぎる。
そんなわけで、誰もいないことをいいことに、しばらく「ヤッホー」を叫んでいました(笑)。
日々のストレスの発散!というのは冗談ですが、自然って面白いなーって思いました。
実はもうひとつ、熊野古道にこんなポイントもありまして。
でも、ホラ貝持ってないから試せませんでした(爆)。
さて、楽しいのはいいのですが、道を戻ったりしたため、確実に時間はロスしています。
下り坂をぐんぐん進みます。
途中、石畳のようなところもありつつ、出てきたところは、久しぶりのアスファルト。
いったんここで車道に出て、またすぐ脇の道から熊野古道再スタート。
なんと、ここからまた相当急な木の登り階段が待っていたのです。
・・・
・・・
・・・キツーイ!!!!!!
また気合いを入れなおさなくてはなりません。
人生、そんなに甘くないのだということを諭されているような気がしました(苦笑)。
しかも、相変わらず人は誰もおらず、また自分の息づかいのみが聞こえてくるわけです。
ちょっとこのあたりは必死でした。
15分ほど登ると、テレビ塔があり、
そこからは緩やかな下りです。人家もあります。
そして、高原熊野神社に到着!!!
相当の達成感です!
思わず名前を記帳しちゃいました。
すると、今日の日付ですでに3人ほどの名前がありました。
ここで初めて道中誰とも会わなかった理由に気づきました。
皆さん、もっと先の目的地まで歩いていくために
この神社は午前中に、とっくに通過していたのだ・・・と。
私のようにちょっと熊野古道の雰囲気を味わいたいというような日帰り娘?は
あまりいないのかもしれません。
それにしても本当にここまで誰とも会いませんでした。
そのまま神社の裏手にまわり、きれいな花が咲いている草原にでました。
こっちでいいのかな・・・進んでいくと、どうも道が急な崖になってきて、
それこそルートから外れている雰囲気が全開になってきて、さすがに引き返しました。
(結局、この草原は間違いだった。危ない危ない)
再度、神社まで戻って、改めてたどり着いたのは、
神社から程近い「高原霧の里休憩所」。
このあたりは早朝の霧が美しいらしいです。
昼でも充分眺めがいいですけど・・・って、あっっっ!!!!!!!!!!
人がいる!!!!!!!!!(爆)
そう、このおじいさん?こそ、私が熊野古道にきて初めて会った(見かけた)人でした。
話しかけはしませんでしたが、なんだか感動しました。
さて、道に迷った時間も考えると、おやおや、バスの時間が間に合わない!
ここから「栗栖川バス停」というところまで山を下りるという大イベントが待っています。
なーんて、実は、私の気持ちとしてはもう終わった気になっていたのですが、
とんでもなかった!!!
軽トラックがやっと通れるような道を下っていくと、そのうち、
木が生い茂り、完全にまた山の中に逆戻り。
しかも、まったく陽の光が当たらないので薄暗いのです(泣)。
さすがに時間も14時を過ぎ、ちょっと日も傾いたのでしょうが、
それでもたった一人で早足で山を下るのは相当の精神力が必要でした。
実は、先述した「ガサゴソ音がして、クマか?と思った」ときよりも怖かったです。
あとどのくらいで下りられるのか、無事バス停にたどり着けるのか、
バスには間に合うのか、このまま迷ってしまわないか、
なぜ相変わらず誰もいないのか!!!
でも、焦っても仕方ない、こんなところに一人でいるのはめったにない機会。
せっかくだし、この山を下り切るまでに、自分の人生設計を立ててみようと
発想転換したのです。
下りなので体力的には苦しくありません。むしろ、リズムにのって軽快に歩いていけます。
独り言をブツブツ・・・という姿も、周りに誰もいないので楽勝です(苦笑)。
私は、今までの自分とこれからの自分を思い描きながらゴールを目指しました。
だんだんと恐怖も楽しさに変わってくるから不思議です。
そうして、約20分強。
自分がこの先どうしたいのかというライフプランが頭の中に完成したところで、
ちょうど山道が切れて、明るいところに出たのです!!!
その爽快感は、ちょっと言葉では表せません。
ライフプランなんて、考えたとおりにうまくいくはずないのでしょうが、
この道中で自信がわいてきて、間違いなくパワーがみなぎりました。
ただ、相当の緊張&興奮状態だったので、
肝心の歩いてきた暗い道をカメラに収めるのを忘れてしまいました。
うーん、残念。
というわけで、後ろを振り返って、私が歩いてきた山を外から激写。
この山の中、ひとりで下ってきたのか・・・。我ながらすごい・・・。
そうして、14時45分発のバスでJR紀伊田辺駅まで戻ることに。
バスの乗客は私だけでした(爆)。
そして、15時41分発の特急にのって大阪へと帰ってきたのでした。
ながーーくなりましたが、どこも削れないくらい貴重な時間でした。
最初はどうなるかと思いましたが、歩いてみて本当によかったです。
次はもっと別のルートで遠くまで行ってみたいと素直に思いました。
熊野古道、お勧めです。VIVA!世界遺産!!!
ただ、次は一人でたぶん行かないだろうなぁ。
山登りやハイキングを普段しているわけでもない私、
今、思い返しても勇気あるなぁと思います。
え?夜はどうしたかって?
えーっと、お好み焼きを地下街でテイクアウトして、ホテルの部屋で食べて、
ドラマを見て、友達と電話して寝ました。
疲労感もあったし、それ以外の刺激を吸収する精神的キャパが
この日はすでになかったので・・・。
え?あまりに文章が多すぎて、皆様の読解のキャパもパンクしそう?
ごめんなさい・・・
Commented
by
まこちん
at 2006-11-16 23:19
x
すごい経験だったね。
写真もいっぱいで、読みごたえがありました。
山の中での人生設計、いいじゃないですか^^
休みを満喫できたようでなによりです。
写真もいっぱいで、読みごたえがありました。
山の中での人生設計、いいじゃないですか^^
休みを満喫できたようでなによりです。
0
Commented
by
mikikasai819 at 2006-11-20 00:59
まこちんさん、長い文章、読んでくれてありがとうございます。
写真、多すぎるかなとも思いましたが、そんなことはなかったですか?
とにかく我ながらすごい経験でした。
今となっては勢いで行ってきた感じもします!?
写真、多すぎるかなとも思いましたが、そんなことはなかったですか?
とにかく我ながらすごい経験でした。
今となっては勢いで行ってきた感じもします!?
by mikikasai819
| 2006-11-16 00:09
| りょこうき(旅の記録)
|
Comments(2)