このき なんのき かさいみき

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元ラジオ局アナで今はフリーで活動中、河西美紀(かさいみき)のげんき・やるき・ほんきのつぶやき。

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1997年11月、彼と出会った南洲墓地

さて、びっくり旅行記後編で書いた
「私の人生になくてはならない強烈な思い出」について
改めて記しておきたいと思います。
(まだ読んでいらっしゃらない方は、ご面倒でも下からご確認を・・・)

思い出・・・それは前編でも書いたように、
学生時代(大学3年時)に九州ひとり旅をしたときのことです。
鹿児島でひとりの初老に出会いました。
西郷どんが最期を迎える前の5日間寝起きしていたといわれる
「西郷南洲洞窟」の前で。
「歴史は好きかい?」と彼はいきなり私に尋ねてきました。
(注:厳密に言うと鹿児島弁だと「歴史なしっけ?」となるようですが、
よく分かりません。よって、残念ながらこの後も一応、標準語で記します。)
あまりにも突然、しかも見知らぬ男性に馴れ馴れしく話しかけられて、
正直ビビりました。
しかし、話してみると非常に優しい方で、それこそ西郷隆盛に非常に詳しくて、
いろいろな話を聞かせてくれたのでした。
だんだん恐怖感・不信感も薄れ、すっかり意気投合した私とおじいさん。
すると「せっかくだから西郷隆盛が眠っている墓地を案内するよ」と。
私は私なりのスケジュールで動いていて一瞬迷いましたが、
何かを感じ、一緒に行くことにしたのです。

その道中、たくさん話をしました。
おじいさんの名前は新山さんといい、
役所勤めを退職して、近所に住んでいるとのこと。
私はアナウンサーを目指していることや、学生生活の様子など。
そうして、西郷隆盛の墓の前で一緒に語り、写真を撮り、
別れる際に「写真できたらお送りしますから住所を教えてください」と尋ねると、
快諾してくださったのです。
「本当に楽しかったよ。アナウンサーに頑張ってなってほしい。
できれば鹿児島でね!」などと励ましてくれました。
話しかけられてからお別れまで、正味2時間でした。

東京に帰ってから、私は早速写真を送りました。
新山さんは、鹿児島のテレビ局の試験情報などを
私のためにハガキで送ってくださったのでした。
(もちろん、個人的に既に調べてあったのですが、
一生懸命ペンを握って書いてきてくださる、その気持ちがすごくうれしかった!)

そして、月日は流れ、就職活動の結果、
鹿児島ではありませんでしたが群馬でアナウンサーになることが決まり、
私は、急いで新山さんに報告の手紙を出したのです。
お会いしてから約半年後のことでした。

しかし、返事はありませんでした。

手紙、届かなかったのかな。お忙しいのだろうか。

翌年の年賀状も出しました。返事はやはりありません。

もしかして、旅先で数時間喋った女の子のことなど、忘れてしまったかな・・・。

そうして、群馬に引っ越してすぐ。
いよいよアナウンサーデビュー!のとき、もう一度手紙を書きました。

すると、数日後、電話がかかってきました。

私の母からです。

「鹿児島の新山さんって知ってる?」
『知ってるよ。あっ、もしかして手紙来た?』
「さっき、新山さんのご家族の方から連絡あったんだけど、
新山さん、去年、亡くなられたんだって・・・

『・・・・・・』

「家族の方がね、最初はあなたの名前を見ても分からなかったけど、
亡くなったあとも手紙が届くから、知らせてあげなくては!と、
わざわざ調べて電話くださったのよ。
ガンだったって。アナウンサー受験のことは気にしていて下さって、
内定もらえたことまではちゃんと伝わってたみたいよ。」

私は、母の言葉の途中から、嗚咽とともに泣き崩れてしまいました。
きっと、墓地に一緒に行ったときは、既にガンに侵されていたのでしょう。
それなのに、何も知らない私のために時間を作ってくださった、
あのときの新山さんの姿・・・。

しばらく泣き続けたあと、私は、
この出会いは絶対に忘れないぞ、大切にするぞと心に誓いました。

そして、墓地に再び足を運んだ2005年12月。
西郷隆盛の墓に手を合わせながら、新山さんに思いを馳せました。

仕事でインタビューをするときなど、
特にご年配の方にお話を伺うときに、時々思い出します。
年齢差・地域差の隔たりなく、
あんな短時間でも心を通わせることができた、その奇跡と喜びを・・・。
Commented by にいにい at 2006-01-09 11:43 x
心にしみる話だね。きっと普段から人との出会いを大切にしているからこそ、こんな素晴らしい出会いにめぐり合えたのだと思います。私だったら警戒しちゃったかも!
Commented by 妹分 at 2006-01-10 16:16 x
美紀さんのお人柄による出会いだと思います☆
そして、私達の出会いも・・・♪
これからの全ての出会いを、本当に大切にしたいと改めて思いました。
Commented by mikikasai819 at 2006-01-10 23:14
にいにいさん、ありがとうございます。
今だったら絶対に警戒していたはずです。
でも、あの時は・・・何かが私の背中を押したのです。
本当に不思議です。

妹分さん、ありがとうございます。
何がきっかけになるか分からないのが
出会いの面白いところですよね。
時間もきっかけも関係ないのですよね。


♪誰かと出会いたい
苦しい出会いでもいいよ♪ by 永井真理子「23才」
by mikikasai819 | 2006-01-07 00:25 | でんき(昔の出来事) | Comments(3)

by mikikasai819