元ラジオ局アナで今はフリーで活動中、河西美紀(かさいみき)のげんき・やるき・ほんきのつぶやき。

by mikikasai819

仕事の記録①お別れの会の司会

既に3週間前の話になってしまうのですが、どうしても書いておきたいお仕事があります。
堀美臣さんというカメラマンの「お別れの会」の司会です。

堀さんは今年の春、ガンで帰らぬ人となりました。
といいながら、私はご本人を存じ上げておりません。
先輩を介して堀さんの奥様と知り合いになり、この大役を仰せつかったのでした。

あくまで葬儀ではなく、「お別れの会」。
堀さんご自身が撮りためたものをドキュメントにして、上映するという趣旨の会です。

私自身、このようなお仕事は初めてだったので、すべてが手探りでした。
私以外は故人と深いご縁がある方々ばかりです。
司会として何ができるか、それはやはり、心をこめて進めていくことに尽きると思いました。

会自体は、堀さんの人柄をしのぶ挨拶から始まり、
ここで意外にも和やかなムードが漂ったりもしました。
「本当によくお酒を飲む人でした」というと笑いが起こるといった風です。
しんみりというよりは、楽しく送り出してあげよう!という雰囲気もちゃんとありました。

ドキュメントを手がけた仕事仲間の監督さんが言っていた言葉が印象的でした。
「堀さんには安らかに眠ってくれなんて言いたくない。
向こうで「いい作品撮ってるなぁ、悔しい!」って言わせたい」と。
誰にでも言える台詞ではありませんよね。

今回の司会で最も重要なポイント、それは、堀さんの残した「さよならの言葉」でした。
生きていられるのは残りわずかと分かった時に、
病床からお世話になった方々に向けて自ら記した手紙です。
これを私が朗読するという場面があったのでした。
本当はひとりひとりにお礼を言いに行きたいが、それも叶わない・・・
どんな思いでこの文章を書いたのだろうか。
面識もない方だけに、勝手に解釈できないけれど、
その一字一句に想像もできないほどのエネルギーを感じました。


間違ったり言いよどんだりすることだけは、絶対に避けなくてはならない。

でも、何度も事前に練習するような類の文章ではない。

とにかく、その場にいる人達に、堀さんの想いをストレートに伝えたい。

でも、感情移入しすぎてはいけない。読み手が泣いてもいけない。


この仕事をしてきて、非常に奥が深い瞬間でした。


今回、痛切に感じたこと、それは、
人生をかけて取り組んできたものがあって、
それを集まってくれた多くの方に見せられる人生って素晴らしいなぁ・・・と。
多くの方が集まってくれる事実そのものも素晴らしいなぁ・・・と。

私はどうだろう・・・。




堀さんとはお会いできなかったけれど、堀さんのおかげで奥様やご親族の皆様と出会えました。
「ありがとうございました」の言葉を胸に、この出会いを大切にしたいと思います・・・。
by mikikasai819 | 2009-08-31 22:39 | はたらき(お仕事) | Comments(4)
Commented by んだすけ at 2009-09-02 14:22 x
手紙の朗読…ってナマだったんですか?すごいですねー。
私もこの手の仕事をしてる会社にいるので、こういう時は全く縁の
ない人を選んで、更に録音しておいてホケンをかける…
そうするだろうな。(この歳ではもう現場に出ないけどね)
ろいろわかっていらして、ナマですからねー。
リハーサルではだいじょぶでも、その時間が来る、場に
飲まれるなど本番は何が起きるかわかりません。
それをぜーんぶまるごと信頼され、任され、遂行する。遣り甲斐を
感じる瞬間ですね。またこの仕事っていうのは、終わってからの
感謝の言葉で、いっくら辛くてもまたやろーという怖いものですよね。
オレだめ。こういうの。全然関係ないのに泣いちゃうから。
Commented by mikikasai819 at 2009-09-02 17:09
んだすけさん、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、非常にやりがいのある、責任のある仕事でした。
録音では出せない空間を作れたのではないかと、
個人的には思っていますが、果たして!?

手紙に限らず、悲しいニュースを読まなくてはならないときは
これまでにもありました。
また、自らの番組の最終回に感極まりそうになったこともあります。
でも、「プロだったら泣かない」と先輩からも言われ、私もそのとおりだと思い、
常に、伝える側の感情は封印するようにしているのでした。
(フリートークは別ですけどね)

※大変なお仕事、本当にお疲れ様です。
Commented by kensanjya at 2009-12-07 13:04 x
お別れ会の時はお世話になりました。色々な立場の方が、自分の思いを込めて、堀さんの事を語っているのを、天国で一杯やりながら、聞いたりしているように思いました。ありがとうございました。
Commented by mikikasai819 at 2009-12-07 14:02
kensanjyaさん、このブログを見つけて書き込んで下さってありがとうございます。
あの会から季節が流れましたが、私の中では忘れられない1日となっています。
堀さんの自由なお人柄が全面に出た、素敵な空間でしたね。
このようなつながりを大切に。
またどこかでお会いできますように・・・。