このき なんのき かさいみき

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元ラジオ局アナで今はフリーで活動中、河西美紀(かさいみき)のげんき・やるき・ほんきのつぶやき。

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祖父との別れを記すvol.1「元気だったのに入院?」

今日、祖父の四十九日法要でした。
あっという間のような、だいぶ時間が経ったような、そもそもやっぱり夢のような・・・。
でも、今日はすごく冷静に、穏やかに、納骨を済ませることができました。
それは、やはり先月、私にとって人生で初めてといえる、葬儀前後の日々を経てこそでした。

実は告別式から1週間経ったときに書いた文章があったのですが、
タイミングを逃したり、体調を壊したり、結局のところ今日まで来てしまいました。
これを逃すと、もう、時間的にも気分的にも載せないままでいってしまいそうなので、
記憶をとどめておくためにも、複数回に分けてUPします。

そこまで克明な文章は望まないという方はスルーしてください。
あくまで、今回は、祖父とのお別れの記録と自分自身の気持ちの整理です。


☆☆☆

昨年11月、風呂場で椅子から転落し、尾てい骨を折ったことをきっかけに体調を崩した祖父。
思ったより重症で、高熱にうなされたり、息が荒くなったり、しばらく入院もしたりして、
家には介護ベッドが設置されて、一気に「病人」という感じになってしまった。
一時は要介護認定4まで上がり、完全に車椅子、トイレも尿瓶だったり、
ヘルパーさんにお風呂に入れてもらったりという生活になった。

そんな祖父が、冬を越えて春になってきたら、ぐんぐん調子がよくなってきた。
ベッドから起き上がるどころか、リビングにあるソファーの定位置にちょこんとすわって、
大好きな時代劇やプロレスを見られるようにまでなった。
ご飯もちゃんと自分で食べている。
それはもう、本当にいつもどおりの生活で、
誰もここまで元気になるなんて信じられないくらい、驚異の回復ぶりだった。

仕事で実家の方に行くと私も必ず立ち寄って「おじいちゃん、どう?」と様子を見た。
「おかげさまで、ありがとう、ありがとう」とニコニコしながら私を迎える祖父。
4月の下旬には歩行器を使ってなんと歩けるようになったようで、
それこそ実家に立ち寄った妹から「おじいちゃんが歩いていたよっっ!!!」と
携帯メールでうれしい報告が入ったほどだった。

☆☆☆

実家に立ち寄った4月30日の午前中、祖父は「ひなたぼっこがしたいなぁ」と言った。
頑張ってテーブルに手をつきながら、伝い歩きで我が家のベランダへ。
置いてあった椅子にちょこんと座って何をするでもなく外を見ていた。
本当にお天気がよく爽やかな気持ちいい日で、私はその姿を何気なく携帯のカメラで撮った。
ああ、こうやって元気になってくれて本当によかった!
・・・まさかその1週間後に亡くなってしまうなんて、想像もしていなかった。

☆☆☆

5月4日。母から電話があって、祖父が入院したと知らされた。
「え?どうして?」
どうやら、あのひなたぼっこの翌日あたりから若干調子が悪くなり、
ご飯が食べられなくなってしまったので、念のため大事をとって入院しましょうということになったらしい。
まあ、すぐに退院できるだろうと、ちっとも疑わなかった。

☆☆☆

5月5日。私は祖父のお見舞いに行った。
祖母と父と私の3人で病室に行くと、祖父は吸入器をつけてベッドに横になっていた。
意識はしっかりしていて、私たちが行くと、しきりに話そうとした。
「何?」
でも、祖父の声はかすれてしまっていて、正直ほとんど聞き取れない。
「何?おじいちゃん?」
ところどころ聞こえる単語を頼りに推測して聞き返して、
合っていれば頷くし、間違っていたら訂正しようとまた頑張って話そうとする。

私は祖父の口元に耳を当て、必死に聞き取ろうとした。筆談も試みた。
自ら吸入器をはずしてまで喋ろうとする祖父。かなり体力を消耗させてしまった。
結局、紙オムツをお尻の下に敷かれているのが不快だったようだ。
本当に今思うと何度も私を近くに呼び寄せ、かすれた声、声にならない声で主張していた。
もっとわかってあげられればよかったのにと後に悔やむ。

この病院でのもうひとつ忘れられないこと、それは、
祖父が、家から持ってきてもらった電気シェイバーで、ひたすら髭剃りをしたこと。
「もう、いいって!剃れたよ。」と言っても、何かに憑かれたかのように、
何度も何度も、何分も何分も、無言で、あごの部分のひげを目をつぶって剃っていた。
この姿が今でも脳裏に焼きついている。

帰り際、祖母が「おじいちゃん、また来るからね。美紀は明日から旅行でいないけどね。」と部屋を出る。
私は、父と祖母が出て行ったあと、もう一度振り返って「おじいちゃん、またね」と言ったら、
祖父はわざわざ身を起こして、弱弱しく、でも、ある意味、力強く、意志を持って、左手を2回振った。
「はいはい、またねー」と言わんばかりに。

それが、最後に祖父を見た瞬間だった。

続く
by mikikasai819 | 2009-06-21 23:10 | にっき(日々の出来事) | Comments(0)

by mikikasai819