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このき なんのき かさいみき

映画「眠り姫」

その情報に気づいたのは、11月4日日曜日午前1時過ぎのことでした。

「11月5日に開催する、映画『眠り姫』マスコミ試写会に30名様ご招待。
応募締め切りは11月3日。」


1日遅かった・・・。

もともと気になっている映画でした。それは言わずもがな。
私の好きな西島秀俊氏が携わっているからです。
11月17日から渋谷・ユーロスペースでレイトショーという情報は
ちゃんと知っていました。
試写会に行かなくとも、ファンなら時間を作って観に行くに決まっている。
でも、この試写会自体に、何か心を動かされるものがありました。
それは次の文章。

「映画鑑賞後にご自身のブログに感想をUPしてくださるのが条件です」

ご自身の・・・ブログ。「このきなんのきかさいみき」。

私。私でよかったら書くよ。つたない文章でもよければ、思ったままを書くよ。

そう思ったのとほぼ同時に、1枚のチラシを引っ張り出してきて改めて凝視しました。
イタリア語のクラスメートであり、一緒にハープ&トークコンサート企画する、
いまや仕事仲間でもある堀米綾さんから先日もらったのです。
「美紀さん、私、今度、眠り姫っていう映画関連でライブやるんだ」
『えっ!西島くんの出てる映画だ!』
確かに眠り姫のチラシの裏に「堀米綾ソロライブ」と書いてある。
そうだ、まさしくこの映画。こんな偶然ってあるのか。

そして、実は何よりタイトルが気になる。

「眠り姫」

・・・まさに私じゃん!(姫かどうかはこの際つっこまぬよう)
どんなに早く寝ても起こされるまでずっと寝ていられる私にとって、
「いくら寝ても寝たりない」というフレーズが、なんだか他人事ではない気がしました。

そこで、応募締め切りから1時間半が過ぎていたにもかかわらず、私はメールを打ちました。

「遅れてしまいましたが、このイベントは私のためにあるのではないか!と
直感したので、応募します。
この映画に関しては、西島秀俊氏のファンを10年以上していることに重ねて、
眠り姫復活を祝っての連続ライブにハープ奏者の友人が参加することで
かなり興味を持っています。どうかよろしくお願いいたします。河西美紀」

原文どおり。まあ、正直、ほぼあきらめの境地で書きました。

しかし、翌日、事務局担当の方からメールが届きました。

「堀米さんのお友達なのですね。お待ちしております」

・・・当たった。

プロデューサー平林様、ありがとうございます!!!
そして、綾さん、力を貸してくれてありがとう(勝手に借りたのだけど。苦笑)。

さて、前置きが長くなりましたが、そんなわけで、マスコミ試写会に行ってまいりました。
場所は「シネマアートン下北沢」。すごく味わいのある小さな映画館です。
私は2番乗りでした。50人くらいしか座れない座席ですが、
後ろから2番目の列の真ん中に座りました。
いい席だ。映画に没頭できる・・・

いや、待てよ。本当にこんな席でいいのか。

ここで、自分自身すっかり忘れていたことを思い出しました。
私は・・・映画が苦手だということを(汗)。

怖いシーンがあると目を背けてしまう、大きな音には過敏に反応しすぎて具合悪くなる、
実に映画向きではなく、大好きな西島くんが出る映画でも残念ながら未見のものまである。
(その後DVDでチェックする。映画館だと逃げられないが、
家だと、最悪、一時停止もできる。・・・って本当に私って・・・なんだかなぁ。)

ま、まあ、大丈夫でしょう。予告編もないし。

マスコミ向けということもあってか、プレスリリースが配られたので、
上映開始まで少しだけ中身を覗いてみました。
あらすじに関しては、以下の通り。

パジャマ姿の青地(つぐみ)が眩しそうにカーテンをめくる。もう陽も高い。
中学校の非常勤教師をしている彼女は、このごろ学校に行くのがおっくうで、
いくら寝ても寝不足の感じが抜けない。
長くつきあい過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、
好きだという気持ちも、既におぼろになっている。
繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ、奇妙な夢。
どうも、何かが変だ。
職員室では、面長の同僚教師・野口(西島秀俊)が、自分の顔のことは棚に上げて、
青地の顔をだんだん膨らんでいると笑う。
帰宅すれば、トイレに貼った猫の写真が、何か言いたげにこちらを見ている。
そこはかとない現実への違和感が、青地の心を占め始める・・・。


これだけでは見てみないと分からないな。怖いというか不気味だな。

あっ、ちなみに、この3人が主な登場人物ではありますが、姿は見えません。
そう、この映画の最大の特徴、それは、

人間がほぼ画面に出てこないことです。

声だけの出演なのです。

これがどのように転ぶか。吉と出るか、凶と出るか。

ちなみに、私は、西島くんがよく出る単館上映モノなどにありがちな、
言葉は悪いけど、言いたいことがよく分からないままエンディングを迎えてしまう映画が
正直ちょっと苦手です。
だから今回、そういう意味でも、期待しすぎずに、何も考えずに、
まっさらな気持ちでスクリーンを見ようと思っていました。

20時スタート。上映時間は80分。

オープニングから、いきなり、心を揺さぶられました。
激しいシーンではなく、むしろその逆。
とても、とても静かです。でも静けさの中だからこそ、
普段気にも留めない、生活の音・自然の音が際立つのです。
静かに心を揺さぶられる・・・まさにこの表現がピッタリでした。
自分自身がそう思ったことに意外ささえ覚えました。

さらに、映画が進めば進むほど、ワクワク感が増してくるのです。
繰り返しますが、激しいシーンはありません。淡々としています。
それもそのはず、映像には人が出ないからです。
人が出てこないことでの想像力は相当なものでした。

次はどうなるのだろう。声だけなので、セリフを聞き漏らすまいと集中力も上がります。

個人的に驚いたのは、あの西島くんの声が違う人のように思えたことです。
さすがに彼のデビュー作から応援しているファンとしては、
どんな少しのセリフでも「あ!西島くんの声だ!」と聞き取れる自信がありますし、
姿がなくても、これまでもテレビでほんの少しナレーションをしていても、すぐ反応していました。
それなのに、この映画の最初は、「え?これがそうなの?」と思ってしまった。
野口という教師役だと、見る前からわかっているのに・・・。
そのことに衝撃でした。あくまで個人的な感想です。すみません。

さて、映画全体のことを私なりに書きます。
「音があっての映像」これが私の第一の感想です。
これまでの常識を破ってもらった感じがして、スッキリした感動が襲いました。
素直に「こういうやり方があるんだ!面白い!」って。

多分、私がラジオ出身だからなおさらそう思ったのかもしれません。
これまでの映画、もちろんTVもですが、
映像があってそれに補足するようにナレーションや音楽があとから入るわけです。
全てではないと思いますが、やはり、1に映像、2に音です。
(ナレーションの仕事をする際には、絵に合わせて声を作り、絵に合わせて間をとります。)

でも、この映画は、音が・・・なんというか、生きています。すごい存在感です。
けだるそうな、それでいて芯の通った会話があって、
それに映像があとから加わって、見えない喋り手の表情を観客に想像させる。
壮大な、それでいて不気味な音楽があって、
それに映像があとから加わって、今何があってこれからどうなるのかイメージを膨らませる。

たとえば、学校の職員室の映像。
先生が普段座っている椅子、英語の教材、黒板、予定表、チャイム。
ガヤガヤと学校特有の音までします。
その間、スクリーンには誰も出てきません。会話だけが聞こえてきます。
でも、そこでちゃんと展開しているように思えるのです。

たとえば、大きな木の映像。
木の向こう側から放たれる光の色は、
時間設定によっても、主人公の気持ちの変化によっても異なって見えます。
別にその木が特別なものではなくても、
鳥のさえずり、電車の走る音、悩みからもたらされるつぶやき、
何の音にプラスされるかで、本当に見え方が全然違うのです。

性描写すら、布団のすれる音や男女のあえぎ声だけで、人の姿はありません。
それはそれでやけにリアルで想像をかきたてられますが、
そこに一見無関係そうな、でも時に切なく、時に強い意思を感じる映像がプラスされることで、
想像を絶する美しさすら感じるのです。これには本当に驚きました。

そして、「音があっての映像」という思いだけで終われなかったのが、
この映画のすごいところでした。
ネタバレは避けたい(多くの人に見てもらいたい)のであえて書きませんが、
残り数分のところで、衝撃の事実が明らかになります。

もちろん、衝撃のシーンそのものはないんですよ。
会話だけでその結末が明らかになるのです。

でも、それを知らされた次の映像から、間違いなく、「映像があっての音」に変わったのです。

映像に釘付けになりました。
いつまでもいつまでも、消えないで見ていたい。

そして、そういう時は、音はちゃんと自分の立場を知っているかのように、
穏やかに、少し控えめに、でもちゃんと存在している。
何だろう、これって。

あー、うまく書けないのですが、これだけはハッキリしていること、
それは、「結末はやはりイマイチ私には分からずその点ではスッキリしないんだけど、
それに納得し、なおかつ感動した映画は初めてかも」ってことです。

ちなみに隣のカップルは「面白かった」『感動した』とそれぞれ一言だけ放って
しばらくたたずんでいました。(相当映画ツウぽかった)

もう1度見てみたら、きっと違う感想を持つのかもしれません。
もう1度見てみたいような、もったいないからこのままの感覚でいたいような。
なんというか、家にたどり着くまで心地よい余韻に浸れる感じの、いい映画でした。

※エンドロールに中之条という文字が出てきて、元群馬県民としては密かに心の中で反応。

※途中、「思い込みから解放されることはいいことだけど、それもまた思い込み・・」
というセリフがあって、やけに心に残りました。当たり前のようでいて、気づかないことですね。
by mikikasai819 | 2007-11-07 01:01 | にっき(日々の出来事) | Comments(0)