このき なんのき かさいみき

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元ラジオ局アナで今はフリーで活動中、河西美紀(かさいみき)のげんき・やるき・ほんきのつぶやき。

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朝にふさわしくない話とは?~体験告白の正否~

以前にも書いた、NHK朝の連続ドラマ小説「純情きらり」ですが、
昨日・今日と、朝から泣いてしまいました。
15分の間にこれだけ感情の起伏があるなんて・・・自分にビックリ。
そもそも、純情きらりは昭和初期、戦争前から戦争に突入していく頃のお話です。
朝から暗い内容かといわれれば、そうなります。
今回も、主人公の恋人の出征シーンでした。
でも、ただ暗くなるというのとは程遠く、様々な愛にあふれた展開を見ることで
今の時代に生きる自分の置かれた立場などを見直す機会になり、
最後にはそれらを心にしっかり留めて1日を前向きに過ごせる気がするから不思議です。
まあ、詳しいあらすじなどは純情きらりHPから見ていただくとして、
今日はこのドラマから思い出した昔話を書いてみたいのです。
内容は全く違いますが、ポイントは
「朝から暗い話をすることが絶対に悪いのか」ということ。
まじめに書きつらねてしまいます。長文になりますがお許しください。

私は、FMぐんまに入社してすぐ、
「フレッシュモーニング」という朝の番組担当になりました。
この番組は7時半から8時55分までの生放送で、
ニュース・交通情報・天気予報・芸能・スポーツ・県内リポートまで、
実に朝らしい情報番組でした。
その中で8時21分から「とれたてサラダステーション(とれサラ)」という
タイトルの「リスナーからのお便りコーナー」がありました。
(今思うと、すごいネーミングですねぇ。私の入る前から代々、続いていたのです。
とれたての新鮮な・・・という意味でしょう。)
このコーナーになると、パーソナリティーのフリートークが始まります。
20分だけなのですが、ハガキ・FAX・メールを読むのが楽しみで仕方ありませんでした。

そんな中、ある日1通の悩みが届きました。
「過敏性大腸炎で人間関係が壊れるのが怖い」
確か、付き合い始めたばかりの彼とデートをすることになったのだが、
途中でおなかが痛くなったらと思うと心配で・・・という内容だったと思います。

過敏性大腸炎。ご存知ですか?
簡単に言うと不安や精神的ストレスが加わった時腹痛を引き起こすというものです。
しかも、一度腹痛を起こしてつらい思いをすると、
次もまたそうなるのではないかと常に気がお腹にいっているため
さらに不安が増してストレスになるという悪循環になります。
実は私、これ、中学時代に経験済みです。
医者で「神経性胃炎と過敏性大腸炎。両方!」と診断されました。
高校受験のとき、「合格できなかったらどうしよう」と
自分で自分にプレッシャーを勝手にかけていたようで・・・。
今思えばひとつの通過点なのですが、当時は、
目の前の高校受験で人生が決まる!と思っていたので、本当につらかったのです。
ちなみに、「受験が終わったら治ります」という診断結果でした・・・!
それじゃ、遅いよー!と泣きたくなった記憶があります(苦笑)。

さてそんなことがあったため、リスナーさんの悩みは本当によく分かりました。
分かるのですが、なんと回答していいのか、
パーソナリティー1年目の私にとって難しいことでした。
「大丈夫」なんて簡単に言いたくないし、不安をあおってもいけない。

そこで、このとき私は、生放送中に決意しました。
隠さず自分の体験談を話そうと。

正直、プライベートの話って、何でも話せるものではありません。
まして、この話題って、特に女性は痛いというより恥ずかしいものです。
それでも、彼女のことを励ますには自分のことを話すしか、
22歳の私には思いつきませんでした。
もちろん、彼女以外の人もたくさん聞いているわけだし専門家でもないので
あくまでひとつの例として・・・。

その日の番組が終わって、反省会の中でスタッフには
「河西さんも昔は繊細だったんだねぇ」などと笑って驚かれながらも(・・・ん?)、
あれはあれでよかったのだと思っていた矢先、
別の部署の上司にすれ違いざまに言われた冷たい言葉が私の心を突き刺しました。

「あのさー、朝からああいう暗い話をするのやめたら?
一気にブルーになるし、第一、君の個人的な話なんて誰も聞きたくないし。
朝は面白くて笑える話に限るんだよ。」


・・・このコメント打ってたら、その瞬間を思い出してブルーになってきた・・・(苦笑)。

「私はこれでよかったと思っています!」って言える程まだベテランではなかったし、
「すみませんでした」と謝るほどの理由は見出せなかったし、
でも、以前あった「面白くなきゃテレビじゃない」という
某放送局のキャッチフレーズには個人的には疑問があって、
それもあってか、ことさらラジオに関しては
「面白いだけじゃラジオじゃない」と思っていて、
第一、とれサラにはこれまでも色々な悩みが寄せられていたわけで・・・
(以下、自問自答)

翌日。

「河西さん、届いてるよ!FAX!昨日の人から」
私は、ニュース原稿チェックよりも気象庁への気温確認よりも
スポーツ新聞拾い読みよりも・・・何よりも先に、そのFAXに飛んでいきました。

・・・今でも忘れられません。

「河西さんのような、人前に出るような華やかなお仕事をしている人でも
同じようにつらい時期があったということ、
そして克服して元気に頑張っていることが、
今の私には何よりも大きな励ましになりました。気持ち次第で治るんですね。
本当にありがとうございます!彼にも話してみようと思います。」


さらに、同じような体験をした人、周囲に同じような人がいる人などからも
メールが届いていました。
「通勤の車の中で朝からじっくり考えさせられました」って。
「頑張って!って伝えてほしい」って。

もちろん、上司の言っていたことも一理あります。
朝から暗い話はやめてほしいという考えの人もいるでしょう。
私が発した何気ないひとことで立腹された人もいるし、
人生前向きに生きていこうと思ってくれた人もいる。メディアってすごいです。

放送は「送りっぱなし」と書く。
一方通行。
受け止め方も色々で、そのひとつひとつまでは見えてきません。
それでも、ラジオの向こうのそのまた向こうがつながっていっている真実。
たった1人の悩みでも、多くの人が聞いて(偶然聞こえて)、一緒に考えた真実。
それは朝だろうと昼だろうと夜だろうと変わらないのではないでしょうか。
朝はこれ、夜はこれじゃなきゃいけないと決めつけるのは
どうしてもナンセンスではないかと私は思うのです。
受け止める側として、広い視野と心の余裕を常に持てるようにしたい・・・と、
今、切に感じています。
そんなことを、純情きらりを見ながら思い出した次第です。
・・・

あー、長くなってしまった・・・。
この一つ前に書いたフィッシュバーガーとかエビカツカレーとかと比べると
180度雰囲気違いますね・・・。
まあ、そんなところも「このきなんのきかさいみき」の特徴です・・・。
お読みいただきありがとうございました。
Commented by 松江在住の後輩 at 2006-07-01 22:28 x
先輩!!
まさに今の境遇です。
ちょっと感動してコメント書いてしまいました。
お許しを。

今、私も朝の番組担当していますが、
本当に難しいなあって思います。
話題選び以前にかんだり、とっちらかっているので
なんとも言えませんが・・・。

いかんせん、私よりリスナーさんが年上が多いので
話題・曲が合っているのか不安なときがあります。
でも、「このアーティスト、紹介してくれるパーソナリティさん
なかなかいないから嬉しかった」とか「あなたにメールしてよかった」
とか送って下さると、嬉しくなります。

もちろん逆の場合もありますが。

そういうメールやFAX番組で紹介する機会がなくて、
いつもはがゆいのですが、自分では忘れられないメッセージです。

「送りっぱなし」だからこそ、一言一言発言に気をつけねば
と再認識しました。
ありがとうございました。
今、思っていることいろいろ、わーっと先輩にお話したい
気分です。
お忙しいと思いますので、メールしまーす。

またお時間があれば、お茶付き合ってくださいね。
やはりVOKは最高!
Commented by mikikasai819 at 2006-07-03 01:46
松江在住の後輩さん・・・心情を吐露してくれてありがとう。
ラジオって、実に色々な人が色々な環境で聴いているメディアで、
お便りを送ってきてくれる方に心から感謝しながらも、
全部を紹介することは残念ながら出来ません。
さらに、アクションを起こさなくても聴いてくれているリスナー、
いわばサイレントマジョリティーの存在も大切にしなくてはなりません。
かといって、全ての人に気に入られるのは難しくて、
でも、独りよがりになりすぎてもよくなくて、日々楽しいけど学習です。
何気ないステキな瞬間のために、何よりも自分が楽しく!
そして、常にラジオの向こうの人(複数じゃないですよ。
ラジオの前のひとりひとり)のことを想って、喋り続けてくださいね。
松江の皆様に愛されるパーソナリティーを目指して♪
(読者の皆様への説明・・・VOKというのはVoice Of Kyoritsuの
頭文字。高校時代のコールサインです・・・)
by mikikasai819 | 2006-06-30 11:24 | でんき(昔の出来事) | Comments(2)

by mikikasai819