このき なんのき かさいみき

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元ラジオ局アナで今はフリーで活動中、河西美紀(かさいみき)のげんき・やるき・ほんきのつぶやき。

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校内放送を使ったユニークな指導

半月前になってしまいますが、7月中に記さないと!
16日の出来事です。

都立荻窪高校で講演&ワークを行いました。
タイトルは

「話し方ひとつで印象が変わる!すぐに使えるあいうえお」

荻窪高校は、言語能力向上推進指定校になっていて、
その一環としてご依頼を受けたのです。

これまで年齢層幅広く指導してきました。
自分の喋り方を変えたい、上達させたいという想いを持った人たちです。
しかし今回は学校行事ですから、
みんながみんな積極的に学びたいという人ばかりではありません。
本当は受けたくないけど仕方なくというオーラを出している生徒もいれば
もちろん楽しみに待っている生徒もいるのでさらに難しいです。

しかも、場所が学校の「体育館」。
生徒が一堂に会することができるのはここしかないということでした。
この猛暑の中、集中するのは至難の業です。
体育館にはエアコンはありません。
春にご依頼をいただいた時から、この暑さがネックでした。

45分授業を2コマ。どうしたものか。

そこで、私は無謀とも思えるある提案をしました。
後半は各教室に戻ってもらおう。涼しい中で実践練習をしてもらおう・・・と。
私は体ひとつしかありません。どうするか。

「放送室をお借りできますか?」

そう、私は、各教室への指示を校内放送を使って行うことにしたのです。
初めての試みです。どうなるかまったくわかりません。
教室に帰ってそれぞれ好き勝手に過ごしてしまったら・・・。
でも、そうならないように語り掛けるしかありません。
入念に準備をして、いざ。

荻窪高校は昼夜間3部制の学校です。
Ⅰ部(午前部)・Ⅱ部(午後部)・Ⅲ部(夜間部)に
それぞれ4時間ずつの授業を行っています。
まずはⅠ・Ⅱ部の生徒に向けての講演からです。
午前中、400人以上が体育館に集まります。

「あちーっ」「だるーい」「帰りたーい」

分かってはいたものの、いざ目の前にして、
私はどうやったら彼らの心に刺さる言葉を残せるのだろうかと思いました。
先生が静かにしなさいと言ってもなかなか静かになりません。
でも、生徒を信じるところから。気持ちを込めて伝えるところから。

「それでは、今日の講師はフリーアナウンサーの河西美紀さんです」

紹介されていざ中央へ。

普段と違う空気をひしひしと感じました。

ちょっと話しただけで汗が噴き出るとはこのこと。
額から流れる汗が目に入ります。
化粧は5分もしないうちに流れ落ちました。
でも、みんな暑いのは一緒。
下敷きなどであおぐ生徒たちに
「あおぐ時間をちゃんと細かくとるから
それ以外の時はあおがないで聴いてもらえるかな」とお願いしました。
もちろん全員は無理でも、守ってくれる生徒はいました。

私から一方的に話をしているときは比較的ちゃんと聞いてくれていましたが
いざ声を出してもらおうと思ったら、聞こえてくる声はまばら。
やはり恥ずかしさもあってやりたくない人も多いのでしょう(苦笑)。
先生方が率先してやってくださいましたが、
「この年頃の子がみんなで一斉に声を出すのは難しい」というのは
今後の勉強になりました。

そして30分を過ぎて、もう暑さの限界。
「長い!」と大声で叫ぶ生徒が現れました。
「そうだよね、長いよね。もうこれで終わります。
でも、話している人にそうやって直接言うことで
相手がどういう気持ちになるかわかるかな。」
時にはそんな話も交えました。

講演を早めに切り上げて、教室へ移動してもらいます。

ここからが腕の見せ所。・・・とはいえ、どうなるか不透明。

ピンポンパンポーン♪

「みんな、教室に戻りましたか。
さっき体育館で喋っていた河西美紀です」

放送室の壁に向かって話し始めます。

「見えてないと思うかもしれないけど、
私にはみんなの教室が見えていますよー」

怪しい透視ではなく、ラジオで喋っているときと同じ感覚です。
リスナーの姿は見えないけれど、心でちゃんと見えている。
それと同じ。ホント。

「では、今からプリントを配って、声を出していきますね」

ニュース原稿、朗読、お知らせ、CM、セリフ・・・
いろいろな喋りのジャンルを知ってもらうだけでなく
早口言葉にも挑戦してもらいました。

「3分間、どうぞ!始めてください!」

指示を出して時間を計って「はい、そこまでです!」と
またアナウンスをします。
放送室には実はエアコンがありませんでした(苦笑)。
でも、声に気持ちを載せる・・・原点に沿って喋ったまでです。

終わった後、担当の先生方が
「ラジオを聴いているようでした」
「生徒たちもみんな早口言葉頑張って盛り上がっていました」と。
ホッとする瞬間でした。

これと同様にⅢ部の生徒さん向けは17時50分から。
(途中の空き時間は荻窪駅でお茶をしていました)
日中の暑さのピークを過ぎてもちっとも涼しくなっていない体育館。
今度は100人程度と人数は少ないですが
同じように進めていきました。
人が話をしているときにスマホをいじる生徒さんもいれば
すごくまじめに聞いてくれる生徒さんもいて
昼よりも個々の態度の際立つ時間となりました。
やはり異常に暑かったけれど、
教室に戻ってのレッスンも無事に務めあげました。

正直、すぐに成果が出るものではありません。
今回伝えたことをいかに自分で吸収して実践するかが鍵です。
いつの日か私が話したことを0.0001%でも思い出してもらえれば・・・。

それにしても、自分自身、本当に今回の講演は勉強になりました。
高校のあり方、教員と生徒の信頼関係についても考える
いいきっかけになりました。
機会をくださったT先生に感謝しています。
Commented by G党38年 at 2014-08-01 16:14 x
河西さん、久しぶりにコメントします。
自身の息子はじめ、思春期の子たちの教育に携わるものとして、今回のブログ内容、とても感銘を受けました。

最初の体育館での公演はかなり厳しい状況だったかもしれませんが、放送室を使っての、姿の見えないリスナー(生徒)への語りかけ、ここからが河西さんの本領発揮といえるところでしょうか。
日頃から見えないリスナーに対しても真心込めて語りかけてこられた心の世界が、こういった場面でも十分に通じるものなんだな、と感じました。
生徒さんたちもきっと河西さんの声に「プロとしての心意気」、そして「愛と真心」を感じたのではないでしょうか。

現代の中高生教育へヒントが与えられたような気がします。

素晴らしい報告、ありがとうございました。
Commented by mikikasai819 at 2014-08-03 20:33
G党38年さん、こちらこそありがとうございました。
こんな素敵な感想をいただき、感動しました。
読みながら電車の中で嬉しくて涙ぐんでしまったほどです。

ここには書ききれないくらい、準備段階からいろいろ試行錯誤しました。
「放送室から何ができるのだ?」と思っていた先生も多いはず。
でも、自分だからこそできることは何かと考えました。
前例がないならやってみる。私が信じないと生徒からも信じてもらえない。
その信念で進めた次第です。
たくさんの生徒の中のたった1人にでも
「話を聞いてよかった」と思ってもらえていればと願ってやみません。

これからもがんばっていきます。本当にありがとうございます。
by mikikasai819 | 2014-07-31 23:07 | はたらき(お仕事) | Comments(2)

by mikikasai819