祖父との別れを記すvol.3「準備、そして対面」

祖父の四十九日法要が終わったので、葬儀前後の流れをまとめた文章をUPしています。
自分の思ったとおりのことを書いています。

リアルな描写はちょっと・・・という方はスルーしてください。
それでも目を通してくださる方は、Vol.1とVoL.2からお読みください。

☆☆☆

5月7日。チェックアウトして行き先は東京。昨日の今頃は想像もしていなかった。
3時間の道のり。全く眠くない。

昼過ぎに実家に着くと、先に到着してた妹のすすり泣きが玄関から聞こえてきた。
私たちとほぼ同時に、1人の男性が我が家を訪れた。
介護ベッド貸出の業者さんだった。不用になったベッドを引き取りにきたのだ。
祖父が寝ていた場所が、少しずつ解体されていく。私はその様子をずっと眺めていた。
こんなにたくさんの部品で組み立てられているんだな・・・と冷静になってみたり、
おじいちゃんは本当にいないんだ・・・と無性にこみ上げてきたり。

業者さんは「ここのところ本当に元気になられていたから、
別の前向きな段階のお手伝いができるかと思っていたら、
まさか亡くなったなんて、本当に信じられなくて、
電話いただいた時、絶句してしまいました」と悲痛に語ってくれた。
私は皮肉にもこういうところでも職業柄か色々興味を持って知りたくなってしまう。
この業者さんは実にプロの仕事をしてくれていた。
介護ベッドを引き取りに来るときというのは、もちろん、元気になって不用になるのが一番いいが、
亡くなって不用になるというのが大半だろう。
これまでにもこういう現場をたくさん経験されているのだと思うが、
本当に丁寧に、心をこめて、機械的ではなく接してくれた。
その対応の温かみにどれだけ救われたか分からない。
数十分の作業のあと、何もなくなってしまったがらんとした部屋を見て、また泣けた。

その後まもなく、葬儀屋がやってきた。
悲しみに浸ってばかりいられないというのを、このときイヤというほど知らされる。
通夜・告別式の日取りを決めるところから始まり、受付の手配、お香典返しの品、料理、
周囲への連絡など、遺族はやることが本当にたくさんあるのだなと思った。
何しろ、本当に初めてなので、横で見ていて全てが新しく知ることなのだ。
葬儀には想像以上にお金がかかること、どんな形式で葬儀を進めていくのかということ、
私は本当に何も知らなかった。知りたくないことだから、
必要以上に避けてここまで生きてきた。
でも、とうとう、本当に当事者になってしまった。

ひととおり終わってから、祖父に会いに行く。
本当は家に帰ってきてほしかったのだが、諸事情あり、別の場所に安置することになったのだ。
家から車で20分。
その場所に着いて、遺体と対面したとき、妹は即座に泣き崩れた。

でも、私は、不思議な感覚に陥ったのだ。

最初に思ったこと。「あ、このにおい、懐かしい」

実は、我が家は長年にわたり寝具店を営んでいたのだが、その工場のにおい・・・
布団のにおい、もっというと、綿のにおいが、その部屋に染み渡っているように思えたのだ。
理由は分からない。でも、確実に、とてつもなく懐かしかった。
「おじいちゃん」と私は思わず目を閉じた。

そして、いざ、顔を見たときに、現実のつらさが押し寄せてきた。
でも、ここでもまた私は、私にしか感じられない気持ちがわいてきた。

それは、祖父のあごだった。

そう、前の日に「もういいよ」といわれてもなかなか手を止めなかった、髭剃りの姿を思い出したのだ。
まるでこうなることを予感したかのように事前にキレイに自分を整えようとしていたのか?とすら思えた。
でも、冷たくなった祖父のあごには、うっすら、でも確実に、白と黒の短いひげが存在していた。
剃り残し?
いや、私が見た光景から、息を引き取るまでの約1日、
ほんの少しでもひげが伸びるほどに、ちゃんと祖父は生きていたんだ。

生きていた証だね、おじいちゃん。

夕食は、母も祖母も作る気力がないだろうし、でも、何かは食べなくてはね!と、
私と妹でお惣菜を買い出し。
祖父のいない食卓。自然とその席は空けてしまう。

話していく中で、祖父が最後に口にしたものは、大好物のスイカだったということが判明した。
今年初モノのスイカだと喜んで食べたと聞いて、涙が止まらなくなった。
同じスイカ、食べてしまわないと悪くなるからと、祖母が切って出してくれた。
父も母も、妹も主人も、みんな食べた。

私には・・・スイカは用意されなかった。

実は私は小さい頃からスイカが大の苦手なので、いつも食べないのだ。
「みきはいらないね。かわいそうにねー。」とスイカの食卓には呼ばれず、
家族の輪から抜けて、一人でテレビを見ていたものだった。

でも、このスイカは特別だ。
私は、無理矢理、口にした。何年ぶり、いや、何十年ぶりのレベルかも。
おじいちゃんと同じスイカなんだよね。
これを数日前に美味しいってうれしそうに食べたんだよね。

このとき、私は初めて、人目を気にせず嗚咽した。
「もう、この先、スイカは一生食べない。これが最後のスイカ。」って言いながら。

続く
by mikikasai819 | 2009-06-21 23:47 | にっき(日々の出来事) | Comments(0)
元ラジオ局アナで今はフリーで活動中、河西美紀(かさいみき)のげんき・やるき・ほんきのつぶやき。

by mikikasai819
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